研究概要 |
血清アミロイドA蛋白(SAA)の代謝機構の解明のため,種々のSAA親和性物質との結合様式を表面プラズモン解析,機種ビアコアを用いて解析した。昨年度に引き続き,HDLとの結合実験の条件検討を繰り返した。固層に固定化した各種rSAAとHDLとの結合の非特異分の差し引きとしてCNBr処理でN末端20個を除去したrSAAを用いた。このN末端欠如SAAはビアコア上でHDLと結合しないこと,マウスに静注した際のクリアランスが極端に速まることがわかった。つまりSAAはそのN末端を介して,HDLに結合すること,HDLに結合できないSAAは速やかに循環より排除されることが示された。すなわち,HDLに親和性が低いほど,組織に移行してアミロイド線維になりやすいと考えられた。実際の各rSAA表現多型の親和性は昨年のpreliminaryな検討と同じく,SAA1.5>SAA1.1=SAA1.3となり,濃度が高くなりやすいSAA1.5で親和性が高いこと,少なくとも本邦でアミロイドーシスの危険因子とされているSAA1.3で低いという結果となった。 このHDLとビアコア上で反応する様式をSAAの特異的結合とみなし,今度はこれまでに報告されているSAA親和性物質の結合様式が特異的あるか否かの検定を行った。いずれもSAAの固定化量の多い条件で,単球,リンパ球は特異的,好中球,大腸菌は非特異的,な様式を示した。なおマウスrSAAは細胞への結合親和性がヒトrSAAより高く,in vitroの線維化実験でマウスrSAAが線維化し,ヒトrSAAがしないのは細胞への結合の強弱にかかわるのでは,と推察された。今後はマウスSAAとヒトSAAのどの構造の違いが細胞親和性を規定するのか検討する予定である。
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