我々は、日本におけるサイログロブリン遺伝子異常症を解析し、すでに55家系71症例を確認した。この数は、諸外国で報告された症例の3倍以上にあたる。これらの症例をまとめるに当たり、日本人で頻繁に認められる遺伝子異常が存在し、ある遺伝子異常はある特定の地域のみに発見され、他の遺伝子異常は日本全国に散らばって発見されることがわかった。当研究では、サイログロブリン遺伝子内のハプロタイプを解析することにより、これ等の遺伝子異常が、創始者効果(founder effect)によるものか、頻回に起こる新規変異(de novo mutation)によるものかを検討した。方法は、サイログロブリン遺伝子内の11ヶ所のSNPsを使用し、日本人一般人口での発現頻度と比較検討した。C1058R、C1588F、C1977S患者は西日本の狭い地域に限定されており、C1245R患者は日本全国に散在した発見されている。予想通り、C1058R患者8人、C1588F患者4人、C1977S患者9人のハプロタイプはそれぞれ完全に一致しており、このハプロタイプの組み合わせは日本人一般人口ではそれぞれ8億人、1.5億人、370億人1人の確率で出現するので、C1058R、C1588F、C1977Sは独立して新しい変異が形成されたというよりは、共通の祖先から受け継いだ創始者効果(fbunder effect)と考えられる。それに反し、C1245R患者のハプロタイプは12人のうち3人が異なっていたため、C1245R変異は一部の症例では独立して生じた新規変異(de novo mutation)と結論された。
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