研究概要 |
本年度は、3種の薬剤耐性菌の解析を行った。 1.腸内細菌のメタロβラクタマーゼ陽性株の解析 2005年1月〜2005年12月に検出された腸内細菌群1950株のうち、イミペネム耐性株が10株(Serratiamarcescens6株、Klebsiella pneumoniae1株、Enterobactor cloacae1株、Providencia rettgeri1株、Enterobactor species1株)が検出された。これらのメタロβラクタマーゼ遺伝子を解析したところ、IMP-1が、E.oloacae, K.pneumoniae, P.rettgeriから、IMP-11がS.marcescensの6株とEnterobactorsp.が検出され、複数のメタロβラクタマーゼの存在が明らかとなった。さらに、パルスフィールド電気泳動の結果、S.marcescensの6株のうち、5株が同一ゲノム型であり、院内での定着が示唆された。 2.多剤耐性緑膿菌の分離状況とメタロβラクタマーゼの解析 2005年4月〜2006年3月の緑膿菌分離株923株中、IPM≧16μg/ml、AMK≧32μg/ml、CPFX≧4μg/mlの多剤耐性株は23株(2.5%)存在した。2剤耐性株は、IPMおよびCPFX耐性が107株11.6%であった。それぞれの薬剤の耐性率はIPM,27%、CPFX,18%、AMK,4%であり、AMKの耐性化が低いことにより、多剤耐性化が抑えられていると考えられた。多剤耐性株は2004年には1.8%であり、増加傾向であった。また、IPMの耐性化は顕著であり、1993年には7.6%であったものが3倍以上に増加した。緻密な監視と拡大防止の方策が必須であると考えられた。 3.ペニシリナーゼ非産生ABPC耐性Haemophilus influenza(BLNAR)の耐性機構 2004年6月から2005年3月に検出されたH.influenzaのうち、ABPC≧2μ9/mlの株でβラクタマーゼ非産生株をBLNARと定義した。ABPC耐性株は269株存在し、そのうちBLNARは241株でほぼ9割を占めた。BLNARの耐性機構との報告のあるPBP3をコードするftsI遺伝子の塩基配列を決定した。解析を行ったBLNARのすべてでSSNモチーフの変異(Met-377→Ile、Ser385→Thr、Leu-389→Phe)が認められ、KTGモチーフでは全例Asn-526→Lysが認められたが、Arg-517→Hisは検出されなかった。これら報告されている領域以外にも変異が検出されており、耐性機構の解析を継続する。
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