研究課題
基盤研究(C)
近年、薬物応答性の個人差には薬物の体内動態に関わる薬物代謝酵素、トランスポーターの遺伝多型が関係することが判明し、ゲノム情報に基づく薬物治療の個別化が推進されて来た。しかし、既知の薬物動態関連分子遺伝子のSNPに差異がなくても薬物動態関連分子の機能には大きな個人差があることも判明してきた。その原因については代謝酵素の基礎発現量に関わる環境あるいは発現調節機構の応答分子の遺伝変異の存在が注目されているが,未だにその本態は不明である。このため、再び個別患者における代謝活性表現型評価法の必要性が注目されている。研究代表者は、内因性副腎皮質コルチゾール分子の6ss位水酸化反応がCYP3A4分子種により行われることに注目し、コルチゾールから6ss水酸化への部分代謝クリアランスを評価する方法を開発し、正常人、肝硬変患者およびCYP3A4阻害薬による薬物代謝酵素活性の評価法を確立した。内因性のステロイドは副腎皮質ステロイドだけでなく、多くの性ステロイドがあり、その部位特異的な代謝に異なるCYP分子が関係している。従って、ステロイドホルモンの部位特異的な代謝物の尿中測定によりCYP3A4以外のCYP分子種の活性の個人差を評価できる可能性がある。これまでに、CYP2C19が代謝に関連すると考えられるプロゲステロンの2位水酸化体とテストステロンの17位水酸化体測定法と、CYP1A2が関係すると考えられるエストラジオールの2-,4,および16α位の水酸化体のHPLC-UV法尿中測定法を確立し、これらの酵素活性の個人差について予備的な検討を行い、大きな個人差があることを明らかにした。更に、感度と特異性に勝るLC-MSにて検討し測定法はほぼ確立した。今後は、本研究で確立された方法論をより大きな健常人集団に対して、酵素活性の個人差と既知のSNP情報との対応と取る臨床試験に発展させる予定である。
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Pharmacogenetics & Genomics 16
ページ: 101-110