研究概要 |
現在,数多くの腫瘍マーカーが癌診断の補助的な指標や癌治療後のモニタリングの指標として利用されているが,それぞれの臨床的意義が改めて問い直されるとともに,新しい腫瘍マーカーに期待が寄せられ,とくに治療の標的にもなりうる抗原の開拓が望まれている.本研究は,新しい腫瘍関連抗原Ep-CAM(MK-1抗原)を標的にした治療に向けての意義を総合的に検討するもので,平成18年度は,次のような点を明らかにした. まず,組換えEp-CAM蛋白を免疫原とする新たなヒト型抗Ep-CAMモノクローナル抗体の作製を試みた.具体的には,KMマウスをEp-CAM発現癌細胞で免疫し,脾細胞リンパ球とマウスのミエローマ細胞を融合して培養し,精製Ep-CAMを固相化したイムノプレートでスクリーニングして陽性細胞をクローニングした.得られた抗MK-1抗体産生ハイブリドーマをプリスタン前処理ヌードマウスの腹腔注射し,得られる腹水からモノクローナル抗体を精製した.精製したヒト抗Ep-CAMモノクローナル抗体のクラスを市販のELISAキットで決めるとともに,BIAcoreを利用して親和恒数を決定した.次に,Ep-CAM抗原を標的とするヒト型抗Ep-CAMモノクローナル抗体の抗腫瘍効果の解析を行なった.具体的には,Ep-CAM発現ヒト胃癌細胞株MKN-45を標的とし,ヒト抗Ep-CAMモノクローナル抗体とヒト補体やヒトNK-LAK細胞との組み合わせによる抗腫瘍効果を証明した.一方,SCIDマウスにヒト胃癌細胞株MKN-45を移植し,ヒト抗Ep-CAMモノクローナル抗体抗体単独,あるいはヒト抗Ep-CAMモノクローナル抗体とヒトLAK細胞を組み合わせて投与して判定した結果,著明な抗腫瘍効果が得られた.以上の結果から,新しく作製した完全ヒト型の抗Ep-CAM抗体が癌の抗体療法に有用であることを示唆された.
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