計画二年度目において実施した、日本人由来ヒト不死化B細胞ゲノムDNA90サンプルを対象にしたreal-time PCRによる遺伝子コピー数の測定において問題となった、検出プローブによってはreal-time PCRの増殖曲線がRNaseP遺伝子のそれと異なっているものがあること、について検討した。具体的には、real-time PCRを行う際に用いるTaqMan Universal Master Mixをmultiplex PCRにより適した製品に変更し、問題のあった遺伝子について再測定を行った。その結果、期待される改善が認められた。 本年度は、新たにAffymetrix社より入手したゲノムDNAラベル法を使い、遺伝子発現用GeneChipをコピー数測定に転用できるかについての検討を行った。対象としては、既に核型解析により染色体数が異なっていることを確認してあるHL-60細胞亜株二株を用いた。プロトコールに従いコピー数を測定した後、測定値をStanford大が開発したCGH-Minerにより解析した。その結果、本法を用いたコピー数測定でも概ね核型解析に一致する測定値を与えることがわかった。しかしながら、核型解析と一致しない領域も存在するため、なお詳細な検討も必要である。更に、同じ亜株二株から得られたmRNAの発現データについても同様の解析を行った。各亜株についてn=6サンプルの発現データを用い、発現量の再現性の高い遺伝子を選択後、CGH-Minerにより相対的発現量が変化している領域を検出した。その結果、ゲノムのコピー数が変化している領域の多くで、遺伝子発現量も同様に変化をしていることがわかり、遺伝子コピー数の変化に応じて発現量も増減することが確認できた。
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