研究概要 |
脳腫瘍の約3分の1をしめるグリオーマは、脳という重要な臓器に浸潤性に進展し,その機能障害をもたらすという点で臨床上極めて悪性度が高い。QOL (Quality of Life)向上のためにも有効な病態マーカーを見出すことは、重要な課題である。本研究は、グリオーマの分子病態、すなわち、発症・細胞の浸潤や進展など悪性化に関与する分子異常を、プロテオミクスの手法(Differential proteomic display:二次元電気泳動法,スポット検出、泳動結果の解析、質量スペクトルを質量分析装置で解析)により解析して、病態発現のメカニズムを解明し、それに基づきグリオーマの悪性の進行度や予後の予測、薬剤による治療効果などをモニタリング可能な、臨床病態マーカーの探索を目的とする。 グリオーマの増殖、病態に深く関与するチロシンリン酸化蛋白質を同定することでグリオーマの分子異常の病態マーカーの探索を試みた。同一患者から得られた、悪性度の異なるグリオーマの組織(グレード1,2、およびglioblastomamultiform (GBM))でのチロシンリン酸化たんぱく質の差異を検討し、悪性化に伴い増加する数種類のチロシンリン酸化蛋白質を検出・同定した。これらのリン酸化蛋白質には、既知の腫瘍関連分子のみならず腫瘍マーカーとして興味深い分子が含まれていた。現在さらにこれらのチロシンリン酸化たんぱく質とグリオーマの悪性の病態との関連性を、他のグリオーマ組織標本のチロシンリン酸化たんぱく質のプロテオーム解析を行うことで、悪性化に伴い特異的に発現されているかを確認している。脳腫瘍の早期診断や治療薬の標的となりうるタンパク分子の特定を進めている。
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