研究概要 |
毛髪基底部からRNAの抽出を試みたが,従来の報告されていた種々のRNA抽出法では抽出できなかった。また,自然脱毛からの抽出も全く不可能であった。従って,抜毛採取が必要であり,新規開発されたRNA抽出キット(MELT^<TM>)でのみ抽出可能であることが明らかとなった。現在おおよそ20本の抜毛で1-3mgの回収が可能であるが,他の組織に比してリボソームRNAの比率が高い。また,男性型禿頭者の禿頭部位に残存する毛髪からの抽出は困難で,健常者毛髪の1/3-1/10程度しか回収出来ないことも明らかとなった。こうして,健常者3名,男性型禿頭者4名からRNAを採取し,DNAtipを用いて発現遺伝子の網羅的解析をおこなった。健常者での毛髪特異的ケラチンの発現はほぼ一定であったが,男性型禿頭者ではK2・K5及びケラチン2・25の減少が認められた。毛髪の軟便に関連する一因子としてprotease-protease inhibitorのバランスが関与するが,fibroblast activating proteinと呼ばれるproteaseが禿頭者で減少していた。この他にも種々の遺伝子の変動がみとめられているが,最も興味深いのは先天性疾患であるoculocutaneoous albinismを引き起こすとされているOCAI, OCAII遺伝子発現が,禿頃者で減少していることであり,同遺伝子が成長したのもでも毛髪の機能・形態維持に重要な役割をはたしていることが示唆された。
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