研究概要 |
男性正常頭髪及び男性型禿頭進行部位頭髪毛根と外毛根鞘からmRNAを直接抽出することを可能にした。得られたmRNAの発現パターンの異同を明らかにするためにDNAチップによる解析を行った。まず,毛髪の質を決定すると考えられるケラチンの分子種と両頭髪でしばしば観察される色調の違いに関わると考えられるメラニン形成に関わる遺伝子に注目し,分析を行った。その結果正常毛では,毛髪ケラチンKA36,ケラチン25などが高発現するのに対し,禿頭毛では毛髪ケラチン酸性5(KRTHA5)と塩基性5(KRTHB5)及びケラチン15(KRT15)が高発現しており,メラニン形成カスケードの律速酵素であるタイロシネース(TYR)とその補助蛋白であるタイロシネース関連蛋白1(TYRP1)の低発現が認められた。この発現量の差をRT-PCRを用い定量したところ,KRTHA5とB5の正常毛での発現量はβ-アクチン発現量の約3.5倍であるのに対し,禿頭毛では約5.5倍であった。KRT15の正常毛での発現量はβ-アクチン発現量の約0.5倍であるのに対し,禿頭毛では約6.5倍であり,相対発現量としては13倍以上であった。TYRとTYRP1は,減少しない禿頭毛もあるものの,正常毛でのそれぞれβ-アクチンの約0.1倍と約0.3倍の発現が激減する症例のあることが明かとなった。また,禿頭者毛髪でも,禿頭進行部以外では正常毛と同じパターンの発現を示すことも明かとなった。そこで,このケラチンの発現パターンにより,禿頭がどこまで進行するのか判定できると考え,特許申請した。
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