研究課題
基盤研究(C)
タバコが及ぼすヒトの健康への影響として、慢性閉塞性肺疾患や種々の癌の発症の他に、虚血性心疾患や脳血管障害が喫煙者に多いことが疫学研究で明らかにきれている。喫煙による心血管系疾患の発症メカニズムを解明し、発症予防の早期確立を目指すことが医学的・社会的に重要であるという観点から、タバコの粒子相成分の1つであるベンツピレン等が結合するアレルハイドロカーボン受容体(Ah受容体)に着目し、喫煙に起因する疾患発症や進展過程における分子メカニズムの解明を行った。まず、AHR遺伝子欠損マウス(AHR-/-)マウス(n=8)と野生型マウス(n=8)に対し、大腿動脈結紮を施行し下肢虚血モデルを作成した。手術後1週間後より、AHR-/-マウスにて血流の著しい改善がレーザードップラー法にて確認され、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)のタンパク発現はAHR-/-マウスにて有意に増加していた。さらに、HIF1A-ARNT複合体のDNA結合活性は、野生型マウスに比べ、AHR-/-マウスにて有意に増加し、クロマチン免疫沈降法でも、AHR-/-マウスにおけるVEGFのプロモーター領域へのARNTの結合活性の増加が確認された。以上の結果から、Ah受容体が欠損すると、Ah受容体と2量体を形成するARNTが低酸素反応性因子であるHIF1Aとの2量体形成に移行し、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)の転写活性を高めることにより、血管新生を促進することを見出し、米国心臓病学会(AHA)で発表した。さらに、成長因子投与による血管新生促進効果を確認した(ATVB 2006・2007)。また、低酸素ストレスや酸化ストレス応答に関連する転写因子の活性化と心血管系疾患の発症や病態進展への関与を報告した(JMCC BBRC 2006)。
すべて 2007 2006
すべて 雑誌論文 (6件) 図書 (1件)
Arteriosclerosis, Thrombosis, and Vascular Biology 27
ページ: 99-105
Journal of Molecular Cellular Cardiology 41
ページ: 318-329
Toxicology 224
ページ: 219-228
Arteriosclerosis, Thrombosis, and Vascular Biology 26
ページ: 1465-1472
Journal of Cardiovascular Pharmacology 47
ページ: 770-779
Biochemical and Biophysical Research Communications 350
ページ: 105-113