研究課題
ダイオキシン類や内分泌撹乱化学物質の環境汚染問題やタバコの成分による健康への影響に社会的関心が高まり、毒性リスク評価や環境基準値の設定が求められている。ダイオキシン類はアレルハイドロカーボン受容体(Ah受容体)と結合し、薬物代謝酵素P450 1A1の発現が誘導された結果、増加した中間代謝物が発癌を促進することが明らかになっている。Ah受容体にはダイオキシン類だけではなく、タバコの粒子相成分であるベンツピレン等も結合するため、環境化学物質だけではなく、喫煙などの生活習慣を視野に入れたAh受容体を介する混合暴露として毒性を総合的に評価しなければならない。喫煙は、虚血性心疾患やバージャー病をはじめ末梢血管障害の危険因子であるため、2008年度は、Ah受容体遺伝子欠損マウスを用いて、タバコの粒子相成分の1つであるベンツピレンによる血管新生に対する影響とAh受容体を介する喫煙の血管新生に及ぼす影響を検討した。その結果、ベンツピレン投与により、血管新生は減弱したが、Ah受容体遺伝子欠損マウスにおいて、その血管新生の減弱が有意に軽減していた。Ah受容体遺伝子欠損マウスでは、ベンツピレン投与後のサイトカインや成長ホルモンの発現の減少が抑制されているため、血管新生が維持されたと考えられた。これまでベンツピレンの毒性機序はP450 1A1によって代謝された後のDNA付加物形成によるものと理解されてきたが、ベンツピレン暴露に起因するHIF-1αを介したVEGF転写活性の抑制という別の機序を明らかにしたことに、本研究の意義がある。Ah受容体を介するタバコの成分の直接的な血管新生への影響を解明したことにより、喫煙を原因とする生活習慣病の病態解明や発症予防に貢献できると考えられる。
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