研究概要 |
エタノール摂取は多環芳香族炭化水素類DNA付加体形成を促進するか動物実験での確認を目的とした。 マウスに2%エタノールを8週間自由飲水させ,人の飲酒状態と仮定した。対照群マウスには水を自由飲水させた。8週後,両群にベンゾピレン(BaP)を腹腔に20または100mg/kg体重を投与し,5日後に肺,胃を取り出し,DNAを抽出し,BaP-DNA付加体を測定した。使用したマウスは,アセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH2)欠損マウスと野生型マウスである。ALDH2欠損マウスは,アセトアルデヒドの過剰な蓄積が起こる。DNA付加体形成にエタノールの影響があるとすれば,それはエタノール自体の影響か,あるいは代謝されたアセトアルデヒドの影響であるかを,このマウスを使うことにより評価することが出来る。 結果として,BaP100mg/kg投与実験では,飲酒群と対照群のBaP-DNA付加体濃度は,メス肺において飲酒群でBaP-DNA付加体の有意な増加が見られた。特にメス肺で,ALDH2欠損群で飲酒による有意な増加が見られた。また,メス胃で対照群,飲酒群とも欠損群で有意な増加が見られた。BaPの投与量を100mgから20mgに下げた実験も行った。ここでも,メス肺でBaP-DNA付加体濃度が飲酒群で高い傾向が見られた。ALDH2遺伝子型別では,欠損型の有意な影響は見られなかった。また,アセトアルデヒド自体によるDNA付加体を測定することもできた。 以上より,BaP-DNA付加体は飲酒群で高い傾向が見られた。特にメスのALDH2欠損で増加の傾向があった。アセトアルデヒドによるBaP付加体形成の促進作用が疑われる。性差があるは,ホルモン等の影響もあるかもしれない。
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