本年度本格研究を開始し、栄養学的調査、血中重金属測定等を行いパーキンソン病との関連を検討した。マンガン中毒でパーキンソン病様症状を呈することが知られているが、我々はこれまでに、ナイアシン代謝における重金属の役割を検討し、マンガンと鉄がニコチンアミドメチルトランスフェラーゼ活性を高める可能性を報告してきた。今年度は特に、血中重金属濃度と食物からの重金属摂取量がパーキンソン病発症と関連性がないか検討を行った。対象者は中国湖北省襄奨市第一人民医院にてパーキンソン病と診断されて3年以内の患者と性及び年齢を一致させたコントロール(頭痛、めまいなどで同医療機関を受診した患者)それぞれ37人(男性22人、女性15人;平均年齢63.3±10.9歳)である。各重金属の摂取量はパーキンソン病と診断される前の状況を1週間当たりの食物摂取頻度によって調査し計算した。血液サンプルは朝食前に採取し、血清中のマンガン、鉄、銅および亜鉛の濃度を測定した。パーキンソン病患者のマンガン、鉄、銅および亜鉛の血清濃度は、それぞれ0.028±0.034μg/ml、1.55±0.97μg/ml、1.03±0.26μg/mlおよび0.76±0.27μg/mlであった。コントロールは、0.012±0.005μg/ml、0.99±0.68μg/ml、0.99±0.26μg/mlおよび0.70±0.24μg/mlであった。血清マンガンおよび鉄のレベルは、コントロールよりパーキンソン病患者において有意に高かった。グループ間の各金属の食物からの摂取量では差は認められなかった。また、水とお茶の摂取量はパーキンソン病患者において有意に低いという結果であった。全体的に血中重金属濃度が高かった今回の中国の対象者において、血中のマンガンおよび鉄の濃度上昇は、パーキンソン病の病因に関係している可能性が示唆された。
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