研究課題
基盤研究(C)
我々は透析患者の悉皆性コホート研究を企画し、岩手県北部地域の透析患者の81%(1214名)の研究参加同意を得て平成15年度に研究を開始した。平成18年度には2年後の追跡調査を全て終了した。平成19年3月現在、25施設中17施設で3年後の追跡調査を終了し、残りの8施設では平成19年4月から6月に3年後の追跡調査を予定している。2年間の追跡調査の結果206名の死亡を確認した。死因の内訳は、心疾患死亡58人(28.2%)、脳血管死亡22人(10.7%)、その他の循環器疾患死亡(大動脈瘤破裂など)8人(3.9%)、癌死亡13人(6.3%)、感染症死亡35人(17.0%)、その他70人(34.0%)であった。死因を年代別(60歳未満、60-69歳、70歳以上)に分けて比較すると、60歳未満の死因の1位は脳血管疾患8名(20%)であった。60代では心疾患死亡が16名(30.7%)で1位、70歳以上では、心疾患死亡が35名(30.7%)で1位、感染症死亡が24名(21.1%)で2位であった。60歳未満の透析患者では、血圧高値が脳血管死亡のリスク要因となる可能性が示唆された。今後3年後の追跡データ収集後にデータの完全電子化を行い、生存分析の手法を用いて透析患者の死亡や循環器疾患発症に影響する要因について解析を行う予定である。また、平成18年度には、無作為抽出した岩手県一般住民を対照として血清フッ素値の比較研究を行った。透析患者の血清フッ素の平均値(男性46.4、女性47.5ng/mL)は、一般地域住民(男10.3、女10.4ng/mL)と比較して高かった。フッ素は骨代謝で重要な働きをする微量元素であり、透析患者の骨代謝異常に血清フッ素濃度高値が大きく関わっている可能性が示唆された。この成果は、第39回アメリカ腎臓病学会に採択され、同学会で発表した。