研究課題
【目的】環境汚染物質であるトリブチルスズ(TBT)の発達神経毒性を、二世代曝露の後、主にオリゴヌクレオチドマイクロアレイによる遺伝子変化の検討を中心に明らかにすることを目的とした。【方法】妊娠ラットにTBTを0,25,50,125ppm含む餌を摂取させて、生まれた雄のF1ラットを生後1、2、3週の時点で処理した。更に餌を通常の餌に変え、6週の時点で処理を行った。ラット脳を摘出し、神経伝達物質抽出用のサンプルと、RNA抽出用のサンプルに分け、それぞれ部位別に抽出した。抽出したRNAからcDNAを合成し、オリゴヌクレオチドマイクロアレイに適用した。変化があった遺伝子に関し、リアルタイムPCRを用いて定量的に解析を行い、またウエスタンブロット法を用いて、中脳のタンパク質レベルを検討した。神経伝達物質に関してはECD付きHPLCにより定量した。また胸腺を摘出し、胸腺細胞のポピュレーションをフローサイトメトリーで検討した。他にTBTが実際に母乳中に検出されるかについて、TBTの代謝産物、DBTの細胞毒性についてまとめた。【結果】F1ラットの中脳でのmRNA発現について、chromogranin Bのアップレギュレーションが量依存性に全ての観察時点で観察された。ウエスタンブロット法による解析では、chromogranin Bの減少が高濃度曝露群のみで見られた。神経伝達物質では、曝露群で特に6週の影響が大きかった。胸線細胞のポピュレーションの結果は、2週でF8(%)の曝露群での上昇が観察された。なお、人間の母乳からはDBTのみが検出され、DBTの細胞毒性はTBTと同程度の強さであった。【考察】TBTによるF1ラットの発達神経毒性は曝露中止後にも顕著でなり、カルシウムの恒常性に関わる遺伝子の変化がオリゴヌクレオチドマイクロアレイで観察され、タンパクレベルでの変化もまた観察された。
すべて 2008
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Biomedical Research on Trace Elements 19
ページ: 67-71
Journal of Health Sciences 54
ページ: 224-228