本年度は、シオノギ研究所より供与されたFLSマウスを48匹を用い、最長1年間飼育した。このマウスは、生下時より脂肪肝があり、12ヵ月齢で約4割に、15ヵ月齢で9割に肝臓がんを合併する。 マウスをコントロール群、乳酸菌投与群、酪酸菌投与群の3群に分けた。乳酸菌群、酪酸菌群とも粉末の餌に菌の原末を10%の割合で混ぜ、6ヵ月齢より経口投与を開始した。コントロール群には粉末の餌のみを与えた。2週間ごとにマウスの体重を測定したが、3群間で体重の増加に差はみられなかった。 酪酸菌は芽胞を形成する嫌気性菌であるため、実際に酪酸菌が腸管内で増殖したか否かを測定するため、栄養体に特異的に反応するモノクローナル抗体を用いたELISA法で糞便中の栄養体数を測定した。酪酸菌群では全例栄養体が観察され、著肝内での菌の増殖が確認された。糞便中の短鎖脂肪酸(n-butyrate、acetate、propionate)をHPLCで測定したところ、酪酸菌群、乳酸菌群、コントロールの順に多い傾向がみられた。 10ヵ月齢と12ヵ月齢にマウスを解剖し、肝臓を摘出した。10ヵか月齢では、3群とも脂肪肝のみで腫瘍は肉眼的には認められなかった。12ヵ月齢では、コントロールでは8匹中2匹の肝臓に肉眼的に腫瘍がみられた。乳酸菌投与群では8匹中に腫瘍を認めたマウスはなかった。酪酸菌投与群では、7匹中1匹に肝臓に腫瘍らしきものを認めた。腫瘍の組織学的検討のためパラフィンブロックは現在作成中である。 次年度に向け、摘出した肝臓より蛋白やRNAを抽出し、当初計画の遺伝子や蛋白の発現を観察する予定である。同時に新鮮凍結切片を用いた組織学的検討(酵素抗体法、共焦点レーザー顕微鏡を用いた解析)も行う予定である。
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