研究概要 |
在胎15日目に2,3,7,8-4塩化ダイオキシン(TCDD)1.0μg/kgを母獣に経口投与暴露して出生した仔ラットに行動実験を行い、ダイオキシン胎内暴露の大脳辺縁系に関連した、以下の3つの行動に及ぼす影響を明らかにした。 1)生後4目から14日まで傾斜板テストを行い、回旋に要する時間(潜時)を測定し、TCDD暴露群と対照群間で比較した。その結果、TCDD暴露群は成長による傾斜版テストの回旋時間の短縮が遅く、対照群と比べ上達に差が認められた。 2)生後19週目のオス仔ラットを、毎目シャトル・アボイダンス・テストを10回ずつ、5日間行う、長期学習群と、1日で50回行う短期学習群の2群に分けた。また、対照群も同様に2群に分けて、課題の学習方法の違う2つの行動について、TCDD投与群と対照群の相違を検討した。その結果、長期学習については、TCDD暴露群の回避率の改善は対照群と差がなかったがが、短期学習では、TCDD暴露群の回避率は対照群に比べ低く、回数を重ねることによる改善も遅かった。 3)TCDDの胎内暴露が味覚発達へ及ぼす影響を明らかにするため、離乳後の味覚発達について検討した。味覚嗜好性は6種のアミノ酸(トレオニン、グリシン、リジン、グルタミン酸ナトリウム(MSG)、ヒスチジン、アルギニン)及び食塩を用いて検査し、生後24-28日と29-33日の各溶液の摂取量割合をTCDD暴露群と対照群で比較した。その結果、雌のTCDD暴露群では対照群で認められた生後29-33日のMSGの増加が認められず、リジンの摂取が増加しており、TCDDが味覚発達を障害する可能性が示唆された。 これらのことから、運動、学習、味覚の発達がTCDD暴露により障害されており、大脳辺縁系への影響が推察された。
|