c-RET遺伝子は受容体型チロシンキナーゼをコードしており、家族性甲状腺髄様ガン、多発性内分泌腫瘍症などの腫瘍性疾患の原因遺伝子であることが報告されている。がん遺伝子RETを導入したマウス(良性腫瘍形成が認められるが悪性黒色種にならない系統)に紫外線曝露を行うことにより、悪性黒色種を発症した。また紫外線照射によりRET遺伝子の発現増強および、この遺伝子の下流因子であり、がん化との関連が示唆されている分子の活性化が認められたことから、紫外線曝露に伴うこれらの反応は悪性黒色腫発症に対し重要な役割がある事が示唆された。 紫外線は悪性黒色腫の発症の原因のひとつと考えられているおり、皮膚組織にあるメラニン色素の紫外線に対する防御効果が疫学的研究において報告されている。またメラニン色素が紫外線によるDNAのダメージを防御していることがin vitroの実験により明らかにされているが、メラニン色素が紫外線によるがん発症に対する予防効果を認めるin vivoによる直接的な証拠は限られている。今回、紫外線照射したメラニン色素過剰マウスと色素の少ないマウスの皮膚のガン化および、ガン化シグナルの活性化を比較することにより、メラニン色素による紫外線の防御効果をin vivoで明らかにした。 セレニウムのがん予防効果を確かめるため、悪性黒色腫自然発症マウスに様々な濃度のセレニウム化合物(乳がんの予防効果が非常に高いと考えられているSe-methylselenocysteineというセレニウム化合物)を長期間投与して、投与量に対してどの程度悪性黒色腫の発症を予防できるか、また発症を遅延できるか検討を行っている。また、ガン予防効果機構解明のため、悪性黒色種に同上のセレニウム化合物を曝露してアポトーシス関連因子の発現動向について検討している。
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