研究概要 |
ダイオキシン類の発達期曝露により神経行動毒性を示すことが過去の研究から報告されている。その毒性の強さは、最強とされる2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin(TCDD)を1とし、その他のダイオキシン類をTCDDに対する係数で示す毒性等価係数(toxic equivalency factor、TEF)が通常用いられるが、高次脳機能への影響もTEFが適合するどうかいままで検討されたことがない。本研究では、妊娠15日目のLong-Evansラットに対しTCDDおよび3,3',4,4',5-pentachlorobiphenyl(PCB126、TEF=0.1)を経口曝露し、その後に生まれた仔ラットを用いて学習行動試験を行うことにより、胎児期・授乳期の高次脳機能がこれらの化学物質によりどのような影響を受けるのかを調べた。また、PCB126の曝露量をTCDDの10倍とし、毒性を等価に揃えることにより毒性影響の強さの比較検討も試みた。生まれた雌雄の仔ラットにはオペラント学習行動試験を施行した。その結果、TCDDとPCB126の低用量と高用量曝露群で雌雄ともに行動が多動になり、中用量曝露群では行動が抑制された。また、現れた影響の強さは、ほぼ同程度であることがわかった。本研究により、TCDDおよびPCB126には類似した神経行動毒性があり、ともに用量に依存した神経毒性を引き起こすこと、現行のPCB126のTEFは学習行動に対する影響も正しく示していることが示唆された。
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