研究概要 |
カーボンブラックはマクロファージに対する細胞障害を持たないが、水溶性フラーレンは単独で濃度依存的に細胞障害作用があった。変成LDLである酸化LDL、アセチル化LDLと共に処置するとカーボンブラック、水溶性フラーレンの濃度依存的に細胞障害作用、増殖抑制効果が増大することが明らかになった。酸化LDLは動脈硬化発症に深く関与することが明らかになっている。今実験結果は血中にナノ粒子が存在するとマクロファージを刺激誘導し、変成LDLを取り込むことによって泡沫化する可能性を示唆した。血小板凝集能は水溶性フラーレンの濃度依存的に、また、ADP受容体を介して亢進する事を明らかにした。ナノ粒子は血管内皮細胞に作用するのみならず、マクロファージにも作用し、細胞障害作用、動脈硬化進展、プラークの破綻、血小板活性化、および血栓形成に関与する可能性を昨年度は報告した。 そこで、本年度は生体でも同様の作用機構で動脈硬化が進展するのか否か動物モデル(LDLR/KOmouse)を用いて検討した。方法は手動による経気道曝露法を用いた。その結果、マウス体内へのCBの侵入は今現在の我々の手法では確認できなかった。組織学的検証から肺胞内にCBの沈着が観察され、気管内噴霧後24時間で血中CRP濃度が上昇したことより、肺胞内で炎症性の変化が生じていることは確実と考えられた。ナノ粒子の化学的性状により細胞障害性が強く、起炎症作用を併せ持つとの報告から、肺組織でのサイトカインの分泌や酸化ストレスを亢進することによって大気中微粒子による曝露で心血管病の発症が増加すると推察した。また、マイクロアレイを用いたバイオインフォマティクス的解析から、CB曝露によってICAM-1,CXCL2,CCL2,FOS,NFkB2 and PPAR-A遺伝子の発現上昇が動脈硬化発症に関与することを明らかにした。
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