地域における自殺予防対策が広がる一方で、その活動を評価する必要性も高まってくる。自殺者数(自殺率)の低下が直接的な指標になるが、人口規模が小さい自治体では毎年の変動が大きく、数年という期間で減少傾向を確認することが難しい。そこで、自殺予防対策の効果をメンタルヘルスの視点から評価することを試みた。 本研究では、自殺予防対策に積極的に取り組んできた地域と、隣接する特別な取り組みをしてこなかった地域(いずれも自殺率が高い地域)、そして自殺率が平均的な地域を対象とした横断的研究と、積極的に取り組んできた地域の取り組み始めた時のデータと比較する縦断的研究を行った。主な調査内容は基本的属性の他、社会的支援、抑うつ度(SDS)、自殺や自殺対策に関する態度、ストレス対処行動である。 横断的分析から、社会的支援では家族に関連した項目では差はみられなかったが、自殺予防対策に取り組んできた地域では地域(行政を含む)支援の認知が高くなっていた。また、ストレス対処行動では予防対策に取り組んできた地域では「否認する」対応が低く、「相談する」対応が高くなっていた。一方自殺に対する地域の雰囲気や自分の態度については、自殺予防対策に取り組んできた地域では避ける傾向にあるという認識が多かった。抑うつ度については3地域間の差は無かった。自殺予防対策に取り組んだ地域の縦断的研究から、ストレス対処行動において「相談する」を中心により幅広い対処行動を選択する傾向が示された。 以上の結果から、自殺予防対策は住民のストレス対処行動を変える可能性があることと、地域での支援を広げるという成果が期待できるということがわかった。
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