自殺予防活動を自殺者数(自殺率)で評価するのは簡単なことではない。また実際に展開される心の健康づくりなどの自殺予防活動は、一次予防的な側面も持っている。そこで、メンタルヘルスの視点から、活動を評価する指標を開発することを試みた。 本研究は、自殺予防活動に積極的に取り組んで来た地域と、隣接する地域の住民を対象にした横断的調査を実施し、自殺予防活動が住民に与えた影響を調べた。調査内容は基本的属性の他、社会的支援、抑うつ度(SDS)、希死念慮や自殺・自殺予防に対する態度、ストレス・ストレス対処行動である。なお、調査直前に対象地域で児童連続殺害事件が発生したためPTSDに関する項目も加えた。 両地域の比較分析の結果、自殺予防活動を展開した地域では、近隣からの道具的支援、自治体相談窓口の認知、そして相談相手の存在という点で肯定的な反応が多かった。PTSDについては17%の住民に該当する可能性が示唆された。 さらに地理的に離れた地域でも同様の調査を実施した所、自殺予防活動に取り組んできた地域は、ストレス対処行動において「否認」が少なく「相談」が多かったのに対し、取り組んでいない地域は「否認」が多く「欲求を満足する」が多かった。 以上の結果から、自殺予防活動は社会的支援とストレス対処行動を指標にすることで、その取り組みの成果を評価することが出来るということがわかった。
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