研究課題
基盤研究(C)
医療機関で診療・研究目的で収集・蓄積される医療情報については、同一地域内でも医療機関ごとに別個に構築されてきたため、医療機関の間で互換性がなく、同じ患者に関する情報が複数の医療機関で全く独立して保管されているのが現状である。この状況は、集団を対象とした臨床研究を行おうとする立場からも、著しく効率が悪い状況である。本研究は、この状況を解決するための第一歩として、茨城県の医療機関を対象とした調査により、診療支援システムおよび実施されている治験および臨床研究の実態を明らかとし、この情報を用いて、既存の診療支援システムを活かした形で、茨城県内の複数医療機関が共同で治験・臨床研究を実施するために必要となる研究用データの交換・蓄積システムを構築するための必要要件を考察したものである。茨城県内で一般病床数が100床以上であった51医療施設のうち、回答を得られた25施設のアンケート調査の結果、および2施設に対するインタビュー調査の結果から、中規模以上の病院における診療支援情報システムの現状について、以下のことが明らかとなった。医事会計システムは十分に普及していること。オーダリングシステム(検査、処方)は80%以上の病院で導入されていること。電子カルテシステムは30%未満の普及率であること。80%の施設で、診療支援情報システム上に入力されているデータを何らかの電子化された形式で出力を行うことが可能であること調査の結果から、地域の医療機関のデータを統合した治験・臨床研究を実施するためには、医療機関において電子カルテシステムの導入が難しい場合でも、入退院時などの患者サマリー情報を電子的に記録すること、すべての診療支援情報システムから、何らかの電子的な形式でのデータ出力を可能にすること、オーダリングシステムの普及率をさらに上げ、100%を目指すことが必要であると結論した。