研究概要 |
本研究の目的は、レセプト情報という自動的に集積される医療情報を用い、糖尿病およびその他の疾患を対象として、標準的な診療ガイドラインなどに沿った治療が行われているかを検証する手法を検討、開発することである。現行のレセプト情報は大半が紙ベースのため、まずレセプト情報を電子化する作業から始めた。ある県の国民健康保険組合連合会とレセプト情報の調査分析について契約を交わした上で、匿名かつ連結不可能な形でレセプト情報を電子化し、6か月間縦覧できるデータベースを作成した。対象としたレセプトは同県内の2自治体の国民健康保険組合(国保加入者約1.4万人)のものである。両自治体あわせて、6か月間で総数約65,000件のレセプトデータを集積した。これらのレセプト情報を名寄せした結果、1か月当たり約7,500人分(病名数約51,000)のレセプト情報となり、一人のレセプトに記載された病名は平均6.8であった。同データベースより、継続的な受診などの選択基準を設け、確実に糖尿病で治療を受けている患者のレセプトを集め、6か月間縦断的に参照できる連結不可能匿名化データベースを作成した。このデータベースを用いて、838人の糖尿病患者に対する主要検査の実施状況を既存のガイドラインの内容と照合することにより、糖尿病診療の医療の質の評価を行った。結果として、血糖コントロールの指標であるHbAlc測定は高率に実施されていたが、腎症および網膜症の評価の実施率は欧米諸国の実施率と比較して低い水準にあった。また、HbAlc測定の実施率は後期高齢者で低く、地域差が見られた。また、健保組合のレセプトを元にした連結不可能匿名化された既存のデータベースを利用し、医療の質の一評価指標である薬剤の重複投薬の頻度等についても分析を行い学会等で報告した。
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