研究概要 |
本研究は、感染症サーベイランス事業で収集されるデータの、より有効活用を目的としたインターネットを用いた流行状況の可視化・還元システムの構築と、流行予想アルゴリズムの考案である。47都道府県の流行性耳下腺炎のデータ(1990年1月から2006年10月までの約80,000件)と北海道21医療圏の流行性耳下腺炎と麻疹のデータ(各1990年1月から2007年2月までの約18,000件)を収集・整理して情報提供用のデータベースとして整備した。今回作成した可視化・還元システムの特徴は、利用者の要求に応じて任意の時期のデータをデータベースから抽出し、自動的にグラフやアニメーションに変換してホームページ上に表示する機能である。グラフに関しては、地域別の流行状況を色分けして表示する流行状況マップ、1年間の時期別・地域別の流行状況が鳥瞰できる3次元棒グラフを提供している。加えて、流行状況の時間的・空間的推移の同時把握を支援するためのFlashアニメーションも提供している。本システムは流行状況の把握を迅速に行なう有効なツールになるものと考える。さらに、データの分布とその位置を捉える基本統計解析、傾向変動、季節変動、循環変動などの時系列データの構造解析を行ない、感染症流行現況把握、流行予測を試みた。流行の警報・注意報発令のアルゴリズムの検討を行ない、過去・現況把握および流行予測を行なった。これらプログラムを搭載することにより、地域クライアントが必要に応じ、独自の情報を作成することが可能となり、地域の感染症患者発生状況の時系列、流行状況、さらに空間的広がりとその推移が視覚化されると考えられた。感染症別・地域別に流行現況表示や短期の流行予測が可能と考えられ、警報・注意報発令のシグナルの呈示は感染症の診断や予防業務に有用であると考えられる。
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