研究概要 |
鹿児島県K市等で実施された乳幼児健康診査・健康相談に参加し、対象の母児の母に対し、妊娠中と出産後の食生活を中心とする生活習慣とくに魚食習慣について質問票調査を行った。また、出産後3〜4ヶ月時の母の頭髪と母乳の提供を求め、提供された頭髪の水銀分析を行った。続いて、1歳6ヶ月児健診の時点で得られる児の成長・発達についての調査を行った。母の頭髪水銀濃度と児の1歳6ヶ月時点での発達状況との関係を解析したが、何れの成長・発達状況と母の頭髪水銀レベルとに関係はなかった。しかし、出産後3ヶ月までの授乳形態のうち母乳の期間によって頭髪水銀濃度を比較すると人工乳のみ授乳した母のそれは1.8ppmであり、母乳のみ授乳した母のそれはlppmであった。対象とした母は平均して1週間に2〜3回、1回当り30〜50gの魚介類を摂取していたので、魚介類のメチル水銀濃度が0.1ppmとすれば、母乳から乳児に移行した水銀は1週問当り3.3〜8.1μgと計算できた。母(53kg)と3ヶ月児(6.2kg)の体重比から乳児は頭髪水銀濃度で表現すれば、6.8ppmのメチル水銀の曝露があったと算出できた。そこで、授乳形態と児の成長・発達について統計学的に検討した。児が誕生日前歩き始めるか否かについてのロジスティック解析では3ヶ月までの母乳栄養児は人工栄養児と比べて有意に歩き始めが誕生日以降であった(オッズ比6.5,95%信頼区間2.3〜18.6,p<0.001)。一方、微笑む(境界は25ヶ月齢)、追視(3月)、なん語を言う(3月)、首をもたげる(3.5月)、聞き耳をたてる(3.5月)、好みがはっきりする(4.5月)、寝返り(5月)については、母乳栄養児は人工栄養児と比べてそれぞれ有意に発現時期が早かった。ただし、授乳形態による児へのメチル水銀曝露についてはさらに確かめる必要がある。
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