病院の在院日数の短縮化により、経管栄養管理などの医療依存度の高い患者が、地域の他医療・介護施設へ転院していく傾向にあり、MRSAや多剤耐性緑膿菌などの薬剤耐性菌や、病原性細菌を保菌した患者を介して施設間で病原性細菌が伝播する可能性がある。本研究では地域医療支援病院と他の医療・介護施設における感染症サーベイランスにより細菌伝播状況把握し、医療・介護施設の感染対策の再検討、施設間共通の感染対策を立案する。今回包括的サーベイランスを実施した結果、採取検体の総数は1737、同定された菌種数は延べ2650種であった。検体別延べ検出菌種数は静脈血330検体65種、動脈血149検体48種、IVH91検体52種、創部54検体79種、カテーテル16検体11種、尿126検体114種、便340検体781種、喀痰631検体1500種で検出菌の約半数が75歳以上の高齢者由来であった。 また、院内感染対策として、小児科慢性期病棟に入退院を繰り返す患児のPseudomonas aeruginosaの保菌状態を継続調査し、その変遷をSpeI-PFGEにて解析した。I大学附属病院小児科に長期間入退院を繰り返す患児3名、2004年8月から2007年7月、診断検体よりのP. aeruginosaとした。調査期間中分離菌株数は、14株、12株、12株でプラグを作成し、SpeIで制限酵素処理後、電気泳動した。フィンガープリントデータ解析にApplied Math社製BioNumeric ver.4.6を用い、得られたfingerpints2株の相似値はDice Coefficientで算出し、系統樹解析はUPGMA(unweight pair-group method with arithmetic averages)によった。SpeI-PFGEの解析結果では、大2グループに分類され、1グループ(9株)は鼻腔・副鼻腔や喀疾、残り1グループ(3株)はカテーテル尿よりの分離株であった。これら2グループ間のsimilarity valueは50%以下であり、カテーテル挿入後に新たな株が定着したと考えられたSpeI-PFGEの解析結果では、similarity valueが85%以上と類似性が高く、長期間保菌し、遺伝子の一部に変異が見られたと考えられた。
|