研究概要 |
本研究は12地域の地域住民コホート集団を対象に、労働環境の行動科学的評価法(Karasek's Job-demand model)で、1992年から1995年まで評価した職場環境と、全死亡および循環器疾患発症との関連を検討することを目的としている。そのために、本年は分担研究者とともに、総務省指定統計調査のもとに研究参加地域の保健所の死亡個票を閲覧することによる死亡発生および死因調査を,2007年4月終了を目標に遂行中である。 また2005年3月31日までに発症した症例の情報収集が終了し、症例判定委員会への審査を経て、解析用の最終データベースが完成しつつある。 労働者の循環器疾患に関連する因子として特長的な行動様式が冠動脈疾患先行行動様式CPBPとして、欧米の疫学研究では指摘されている。この分野の前向き研究はわが国では少ないが、本研究課題に関連する因子として検討を要する課題である。研究開始時に冠動脈疾患先行行動様式CPBPの評価法であるTokai Activity Survey(TAS)を用いて評価した労働者のCPBPと、総死因および循環器疾患死亡の関連について解析した。当初の研究仮説に反して、女性ではCPBPの傾向が高いほど死亡の危険度が低い傾向が見られた。男性では一定の傾向が見られなかった。 Karasek modelで評価したDemand-Control modelと2002年までの総死因死亡の関連では、仕事が忙しく自由裁量度が高いActive job群が、他の3群に比べ総死亡が有意に低く、死因別では主に悪性新生物による死亡が低いことが寄与していた。循環器疾患死亡については有意な差が見られなかった。今後発症についても検討する予定である。
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