研究概要 |
本研究は12地域の地域住民コホート集団を対象に、労働環境の行動科学的評価法(Karasek's Job-demand model)で、1992年から1995年まで評価した職場環境と、全死亡および循環器疾患発症との関連を検討することを目的としている。そのために、本年は分担研究者とともに、総務省指定統計調査のもとに研究参加地域の保健所の死亡個票を閲覧することによる死亡発生および死因調査を,2007年4月終了した。 また2005年3月31日までに発症した症例の情報収集が終了し、症例判定委員会への審査を経て、解析用の最終データベースが完成しつつある。 自治体と協力した9年間の追跡後、男性157人と女性64人の死亡が確認された。 Coxの比例ハザードモデルを用いた多変量解析の結果、男性では、要求度が高くかつ自由度が低い群に比べて、要求度が高くかつ自由度も高い群(active job)は有意に低いハザード比を示した0.53(95% confidence interval: 0.31, 0.89)。この低下は主に悪性新生物による死亡リスクの差が寄与し、循環器疾患死亡や外因死では有意な差がみられなかった。女性では有意な関連はみられなかった。 以上より、日本人男性労働者ではactive job環境が悪性新生物死亡のリスクを低下させる可能性が示された。
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