研究概要 |
平成19年度の実施形式を踏襲して調査を継続した。前年度の報告書にも記したように、新規のADHD症例は和歌山県外の研究協力機関においてもほとんど発生しなかったため、主要結果は前年度の報告とほぼ同じである。最終年度の報告として、回答の信頼性が不十分な者および本科学研究費補助金交付以前に予備調査として収集していたデータを除き、平成20年12月までに症例児童および母親87組、対照児童および母親250組を対象に多重ロジスティック回帰分析を実施した。主な結果を以下に示す。 1.妊娠中の母親の能動喫煙と児童のADHDには有意な関連性を認めなかった(補正オッズ比1.5,95%CI0.7-3.4)。 2.妊娠中の母親の飲酒と児童のADHDには関連性が認められなかった(補正オッズ比0.2,95%CI0.04-1.3)。 3.妊娠中の母親の重度精神的ストレスは児童のADHDと強い関連が認められた(補正オッズ比7.7,95%CI2.7-22.1)。 4.両親の精神障害の既往ならびに、母親のADHD傾向と児童のADHDの間には有意な関連性が認められた。 5.面接調査後6ヶ月以内に行った再調査により、母親による妊娠中の生活習慣の想起ならびに子どものADHDの状態評価には十分な再現性があることが確認された。 まとめ:ADHDの発症には、妊娠中の母親の生活習慣よりも、ADHDを含めた精神疾患に関する遺伝的脆弱性が強く関与している可能性が示唆された。
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