研究概要 |
ウイルス肝炎流行時(1962〜68年)より継続して採取され凍結保存されている既往者の血清を用い、C型肝炎ウイルス(HCV)の量的・質的変動を計測し、病態の進展との関連性を明らかにし、また、B型肝炎ウイルス(HBV)などの重感染がHCVの変動および病態に及ぼす影響について検討した。 既往者(A群)について、病態別にHCV抗体(III)・HCVコア抗原・HCV-RNAなどの測定を実施した。適宜、HBs抗原・抗体、HBc抗体、HBV-DNAなどの測定も行った。 肝癌による死亡が確認されたA-a群(9名)ではHCV抗体・HCVコア抗原ともに高値が持続し、発症後約20年経過後もHCV-RNAは陽性であった。肝硬変による死亡が確認されたA-b群(5名)では1名を除き、HCV抗体・HCVコア抗原ともに高値が持続しHCV-RNAも陽性が持続したが、A-a群に比較して低い値で推移した。肝機能異常が長期間持続したA-c, d, e群(53名)ではHCV抗体・HCVコア抗原ともに高値が持続するもの、中程度の値が持続するもの、一方のみ高値が持続するものなど多彩な推移を示し、約70%でHCV-RNA持続陽性であった。発症後一年以内に肝機能が正常化したA-f群(13名)ではHCV抗体・HCVコア抗原ともに陰性か低値で推移するものが多かった。A-a〜f群ではHBs抗体陽性者では陰性者に比較してHCV抗体・HCVコア抗原ともに低値で推移する傾向が見られた。さらに、HBs抗原持続陽性者A-z群(9名)ではHBV-DNA量によりHCV抗体・HCVコア抗原の値、肝機能が変動した。以上の成績より、既往者の肝病態の進展はHCV抗体・HCVコア抗原の量的変動さらにはHBVの重感染などに大きく影響されることが示唆された。
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