研究概要 |
C型肝炎ウイルスを主因とした肝炎流行時(1962〜68年)より継続して採取し凍結保存されている既往者血清を用い、肝炎ウイルスの量的・質的推移と病態の進展との関連性を平成18-19年度の成果を踏まえ解析し、さらに本流行例の特徴および予後について詳細に検討を加えた。HCVコア抗原量・HCV-RNAジェノタイプ・HBc抗体量など適宜追加して測定した。A-a〜A-f群のうち20年以上継続して追跡できた147例について発症から約20年経過した時点のHCVコア抗原量から3群(A群64例:≧2000fmol/L, B群42例:20-1999fmol/L, C群41例:<20fmol/L-抗原陰性)に分け検討した。A群では20年以上肝機能異常持続・ZTT、B群では男女比・20年以上肝機能異常持続・ZTT・ALB・IV型コラーゲンの各項目でC群に比較して有意差(p<0.05)が認められた。A群・B群間ではZTT・ALBに有意差(p<0.05)が認められたが、発症時年齢・HBV抗体保有・HCV-RNAジェノタイプ・α-フェトプロテインでは3群間に有意差は認められなかった。発症から約20年間のHCVコア抗原量の推移ではA群は発症後約10年まではB群に比較して低値で推移しその後増加し有意(p<0.001)に高値を示すが、B群では発症後5年以内に2000fmol/L以上の値を示し10〜15年経過時にピークを示した後低下している。発症後早期から2000fmol/L以上の値を示したB群では他の群に比較して有意にZTT高値・ALB低値を示し、有意差は認められなかったがIV型コラーゲン・AFPで高い値を示すなど血清生化学値からみた肝病態の進展は発症から比較的早期の抗原量の増加に関連があることが示唆された。また、B群では有意差は認められなかったものの男の割合・HCV-RNAジェノタイプ1bの割合が多いなどHCVコア抗原量の推移・予後との関連性を示唆する知見も得られた。
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