我々は、B型インフルエンザウイルスの抗原性変異を解析してきた。B型インフルエンザウイルスの宿主はヒトが中心で、抗原性変異はヒトの中で発生し変異したウイルスがヒトからヒトへと伝播すると言われている。シーズンを越えて経年的に抗原性変異を観察すると、個人から分離されたウイルス株に従来株と変異株が混在し、その変異株が次のシーズンに優勢になることを発見し報告した。これは、ヒトの生体内でウイルスが変異していく過程をとらえたことを意味する。 本研究では、これまで明らかにされていなかった複数のウイルスの混在について、それを識別し比率を測定する方法を開発した。蛍光色素LCGを加えてキャピラリーPCRで増幅した産物を融解温度曲線の変化で観察する方法で、精度よく再現性の高い測定系を確立できた。この方法でインフルエンザ流行シーズン中に分離されたウイルス株での従来株と変異株の混在比率を半定量的に評価したところ、1時間以内に混在比率1対3程度まで混在識別が可能である測定系を開発することができた。 本研究で、我々の提唱しているB型インフルエンザの変異株出現からシーズンに伝播する感染拡大モデルが証明できた。この方法は、ウイルスに限らず、細菌などでも遺伝子変異が混在していることが短時間で簡便に検出できることであり、細菌の薬剤耐性化の過程などにもこの解析法を応用する予定である。
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