大阪府の全公立小学校児童を対象とした自覚症状調査が、1973〜2003年まで2〜3年毎に実施され、その中から児童のアレルギー症状の推移を解析した。気管支喘息の症状である喘鳴有訴者率は、1973年から83年まで一定であったが、その後93年まで増加し、以後再びほぼ横ばいとなった。アトピー性皮膚炎既往率は、85年から93年まで喘鳴の増加と同時期に急増し、その後減少した。目のかゆみと鼻炎症状は全体では増加傾向にあるが、いずれも季節の内訳では、スギ花粉症と考えられる春期の症状が増加して、通年性の症状はほぼ横ばいの状況であった。アトピー性皮膚炎の1年以内の有症者は高学年ほど少なく、成長とともに寛解する傾向を示し、喘鳴も近年は同様であった。一方、鼻炎症状と目のかゆみは高学年ほど高率で、出生コホートの推移から、成長とともにさらに発症していた。またこれらのアレルギー症状有訴者は、他のアレルギー症状を相互に重複して訴える率が高かったが、鼻炎症状と目のかゆみとの間では、春期と通年性との重複は少なかった。 小児のアレルギー疾患は、アトピー性皮膚炎と気管支喘息が乳幼児期に発症し、それらが軽快または寛解しつつ、数年から10年後くらいにかけてアレルギー性鼻炎や眼アレルギーを発症する「アレルギーマーチ」という病態を呈することが多いといわれる。大阪府の児童において、このアレルギーマーチの症状変遷が集団的に観察された。喘鳴とアトピー性皮膚炎の増加が10年前に停止しており、今後の鼻炎と目の症状の推移が注目される。次年度は、現在集計作業中の2006年度調査の成績を加えて再検討するとともに、症状により異なる様相を示す地域要因の解明を目指す。
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