大阪府の全公立小学校児童を対象とした自覚症状調査が、1973〜2006年まで2〜3年毎に16回実施され、その中から児童のアレルギー症状の推移を解析した。大阪府全体で気管支喘息の症状である喘鳴有訴者率は、1973年から83年まで一定であったが、その後89年まで増加し、以後再びほぼ横ばいとなった。アトピー性皮膚炎既往率は、85年から93年まで急増し、その後減少した。鼻炎および目のかゆみは93年以降、通年性の症状は横ばいであったが、花粉症と考えられる季節性の症状が増加していた。アトピー性皮膚炎の1年以内の有症者は高学年ほど少なく、成長とともに寛解する傾向を示し、喘鳴も近年は同様であった。一方、鼻炎と目のかゆみ症状は高学年ほど高率で、成長とともにさらに発症していた。またこれらのアレルギー症状有訴者は、他のアレルギー症状を相互に重複して訴える率が高かったが、春期の鼻炎と通年性の目のかゆみ症状との重複は少なかった。地域特性を考慮して抽出した特定校の個人票により症状合併パターンをみると、この10年あまりの間、上記のアレルギー症状を1つ以上有する者は約45%、いずれもない者は約55%でほぼ一定であった。アレルギー症状の内、喘鳴、アトピー性皮膚炎、鼻炎および目かゆみの通年性症状を1つ以上もつ者は1993年の29%から2006年の21%に減少したが、花粉症と考えられる季節性の鼻炎または目の症状だけを持つ者は8%から15%に増加し、季節性と通年性の両方を持つものは約9%で横ばいであった。小児のアレルギー疾患は、各症状が交互に発症、寛解する「アレルギーマーチ」という病態を呈することが多いといわれている。大阪府の児童においてこのアレルギーマーチの症状変遷が集団的に観察された。しかし近年、通年性アレルギー疾患とは独立して発症する花粉症様症状有訴者が増加していた。
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