本年度は、下記3課題を実施した。 (1)総合的ストレス評価PCソフト(労働者用)の現場試用 昨年度開発した、コンピュータを用いたうつ症状評価用IRT-CATを内装した総合的ストレス評価システム(労働者用)に改訂・改良を加え、第2版を開発した。四国全域を網羅する金融機関全事業所にて試用し、約420名から回答を得た。その結果、(1)平均11項目でCATによるメンタルヘルス推定は終了、(2)質問の画面提示から回答するまでの平均回答時間は約10秒、(3)識別力の大きな質問項目が選択提示される傾向が顕著などの昨年度調査とほぼ同様の結果を得た。また、(4)調査システムを複数回実施できる形式のため、多いものでは30回以上も実施しているケースもあった。この複数回実施の場合の対処方法について、今後どのような使用の仕方が望ましいのかを検討する必要性を認めた。 (2)仕事-家庭葛藤の検討 現場使用した評価システムには、仕事-家庭葛藤に関する質問尺度も含まれていた。そこで、このデータに関して、統計解析を行い、以下の所見を得た。(1)仕事→家庭葛藤およびその逆向きの家庭→仕事葛藤とも、既婚女性労働者が他の群より有意に高いが、それらの精神健康状態との関連性は、むしろ既婚男性労働者の方が高いこと、(2)既婚女性労働者にとって、家庭→仕事葛藤は精神健康阻害因子とはなっていないこと、(3)精神健康状態との関連性、すなわちストレッサーとしての、仕事→家庭葛藤および家庭→仕事葛藤の指標としては、各尺度をそのまま2指標として使う方法、合計得点を1指標として使う方法、ならびに各尺度の高低区分により組合せた複合指標として使う方法が、説明力が高いことなどの結果を得た。 (3)思春期メンタルヘルスツール開発のための基礎的検討 思春期用CATシステム開発のための基礎資料として、公立中学校において質問紙調査を4回縦断的に実施し、ストレス反応に対する学校ストレッサー・ソーシャルサポート・レジリエンス(精神的回復力)の複合的影響などに関する検討を行った。
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