研究課題
基盤研究(C)
月経前に現れる身体的及び精神的愁訴は「月経前症候群(PMS)」と呼ばれ、種類や程度を問わなければ、性成熟期の大半の女性が自覚しているといわれている。また生活の質を下げるほどの著しい気分の変動や不安に加え、活動に対する興味の減退と各種身体症状を伴うPMSの重症例、「月経前不快気分障害(PMDD)」も認められており、本症状に悩む女性がドクターショッピングを重ねるケースも報告されている。PMSの病態に関しては、これまでに様々な仮説が報告されているが、統一した見解が得られていないのが現状である。本研究では、性成熟期の女性を対象に、卵巣ホルモン、体内環境の恒常性の維持に寄与する自律神経(ANS)活動、ストレスホルモンを月経周期に応じて測定し、神経内分泌動態の観点からPMSの発症メカニズムを探求している。平成18年度に得られた成果は下記の通りである。PMS症状のない健康な女性(Control群)28名、PMS症状のある女性(PMS群)23名、PMDD患者11名を対象にPMSの神経生理学的要因を検討した。ANS活動は心拍変動パワースペクトル解析により評価した。また、目に見えない心のストレスを定量化するクロモグラニンAも測定し、交感神経-副腎系の活動動態指標とした。その結果、Control群では、ANS活動が月経周期に応じて変化しないことが認められた。一方、PMS群では、卵胞期と比較し、黄体後期の副交感神経(PNS)活動が有意に低下していた。PMDD患者においては、黄体後期の不快症状がControl群の2.1倍、PMS群の1.4倍高く、ANS活動に関しては、これら2群と比較すると卵胞期・黄体後期の両期において心拍変動が減衰、PNS活動が顕著に低下していた。さらにPMDD患者では黄体後期のクロモグラニンAの濃度が高い傾向にあることも認められた。これらの結果を考慮すると、月経周期に伴う自律神経機能の変化が、PMSとして認められる黄体後期特有の複雑多岐な心身不快症状の発現に関与する可能性があることが示唆された。
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