本年度は宮城県立がんセンター入院時に質問紙調査に回答した前立腺がんおよび病因対照症について、食物摂取頻度調査票(FFQ)の回答と五訂増補日本食品標準成分表からビタミン、カロテノイド摂取量を計算し、これらの栄養素と前立腺がんリスクとの関連について症例対照研究の手法を用いて具体的に検討を行った。 対象となった症例数は前立腺がん症例282例、病因対照症例1730例であり、このうちFFQ40項目中で22項目以上が無回答である者を除いた症例260例、対照1599例を解析対象とした。unconditional logistic regression modelを用いて生年、調査年、居住地、受診契機、喫煙、飲酒、前立腺がん家族歴、職歴、身長、出生地を補正したオッズ比を算出することにより、α-カロテン、β-カロテン、ビタミンD、クリプトキサンチン、α-トコフェロール、葉酸、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC摂取量ならびに関連食品の摂取頻度と前立腺がんリスクとの関連について検討を行った。前立腺がんリスクの検討は全体、限局、進行がんのそれぞれについて実施した。 その結果、上記のビタミン、カロテノイド摂取量と前立腺がん全体のリスクとの間にはいずれも有意な関連を認めず、限局がんおよび進行がんに分けた検討でも同様であった。関連食品の摂取頻度では、緑葉野菜(ほうれんそう、しゅんぎくなど)の摂取頻度の増加に伴い進行前立腺がんのリスクが有意に低下する傾向を認めた。
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