研究概要 |
本研究の目的は、肝細胞癌(HCC)発症におけるB型肝炎ウイルス(HBV)およびC型肝炎ウイルス(HCV)感染、肝線維化の程度、生活習慣などのリスク因子の寄与について検討し、慢性肝炎の進展促進要因を明らかにすることである。 我々は、1958年から長期追跡を行っている成人健康調査集団の保存血清を用いてコホート内症例対照研究を行った。224名のHCC症例と、性、年齢、都市、血清保存時期・保存方法を一致させた644名の非HCC対照例が、放射線量に基づくカウンターマッチング法を用いて選別された。血清は凍結法および凍結乾燥法で保存されていたことから、HBVとHCVの血清学的および分子生物学的検出における両保存法の比較検討を行い、凍結血清と凍結乾燥血清がほぼ同等に使用できることを検証し、報告した(Ohishi W et al. J Clin Micrdbiol.2006;44:4593-4595,Ohishi W et al. In : RM Mohan(ed.), Research Advances in Microbiology. Kerala, India : Global Research Network,2007. in press)。 単変量解析では、HBVおよびHCV感染、飲酒、現喫煙、HCC診断10年前の肥満(BMI>25kg/m^2)と糖尿病がHCCリスクの有意な増加と関連していたが、一方では、はぼ毎日のコーヒー摂取はHCCリスクの有意な低下と関連していた。多変量解析では、HCCの相対リスク(95%CI)は、HBV感染のみで44倍(14.5-134)、HCV感染のみで95倍(36.3-249)、HBVとHCVの重感染で69.9倍(8.4-582)、エタノール換算20g/日の飲酒で1.69倍(1.15-2.48)、HCC診断10年前の肥満(BMI>25kg/m^2)で4.63倍(1.88-11.4)であり、これらの因子は独立してHCCリスクの増加に寄与することが示された。さらに、肝線維化の程度(サロゲートマーカーとして血小板数とIV型コラーゲンを用いた)を調整した多変量解析を行っても、HBVおよびHCV感染とHCC診断10年前の肥満(BMI>25kg/m^2)はHCCの独立したリスク因子であることが示された。
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