研究課題
基盤研究(C)
本研究の目的は、肝細胞癌(HCC)発症におけるB型肝炎ウイルス(HBV)およびC型肝炎ウイルス(HCV)感染、肝線維化の程度、生活習慣などのリスク因子の寄与について検討し、慢性肝炎の進展促進要因を明らかにすることである。我々は、1958年から長期追跡を行っている成人健康調査集団の保存血清を用いてコホート内症例対照研究を行った。224名のHCC症例と、性、年齢、都市、血清保存時期・保存方法を一致させた644名の非HCC対照例を、放射線量に基づくカウンターマッチング法を用いて選別した。凍結法および凍結乾燥法で同時期に保存された血清を用いて、HBVとHCVの血清学的および分子生物学的検出における両保存法の比較検討を行い、凍結血清と凍結乾燥血清がほぼ同等に使用できることを検証した。HCCの多変量相対リスク(95%信頼区間)は、HBV感染のみで45.8(15.2-138)、HCV感染のみで101(38.7-263)、HBVとHCVの重感染で70.7(8.3-601)、エタノール換算40g/日以上の飲酒で4.36(1.48-13.0)、HCC診断10年前のBMI>25.0kg/m^2の肥満者で4.57(1.85-11.3)であった。さらに肝線維化の程度を調整しても、HBVおよびHCV感染とBMI>25.0kg/m^2は、独立したリスク要因として残った。また、HCV感染者において、BMI1.0kg/m^2増加に対するHCCの相対リスクは1.39であり(P=0.003)、有意な相乗的交互作用が認められた。本研究成果は、過剰体重のコントロール(特にC型慢性肝炎)および節酒が、慢性肝疾患患者のHCC発症予防に寄与することを示唆している。
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