予定している約30例の乳幼児突然死剖検例のうち、約20例の肉眼的、病理組織学的検索が終了し、その過程において1例の肥大型心筋症例を見出し、3例において、心基部中隔において、限局的に錯綜配列や高度の心筋線維化を伴う肥大型心筋症疑い例を検出した。この疑い例においては肥大型心筋症との異動、突然死との関連について、対照例との慎重な比較検討を行い、その意義について検証中である。また、1例において、心筋緻密化障害を見出したほか、心内膜弾性線維症3例、粘液腫、総肺静脈還流異常、大動脈縮窄(高度に発達した動脈管を伴う)、リウマチ性心筋炎、サイトメガロ心筋炎を各1例ずつ検出し得たことから、乳幼児突然死においては、心臓疾患の詳細な検索が必要であることが明らかになってきた。また、その他に心臓に軽微な炎症細胞浸潤を伴う心筋炎疑い例や、冠状動脈口の低形成ないし異形成であることが疑われる例を見出し、その診断基準、突然死に関する意義について、検索中である。房室伝導系においては、約半数の症例において、副伝導路となりうるaccessory connectionが検出された。これらの副伝導路に関しては、不整脈の原因となりうる可能性が強く推察される。また、その形態学的異常をさらに追求する目的で、GAP結合の分布に関し、免疫染色、画像解析を用いて検索中である。以上の所見の大半は乳幼児突然死と推察されているものの、ほとんど剖検で証明された報告がないものであり、研究終了時までに診断基準の確立を目指し、いわゆる乳幼児突然死症候群と称される例において、心臓性突然死と考えられる症例が少なからず見出されることを公表する予定である。
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