1. きのこの採取:スギヒラタケの採取を例年と同じ秋田県内で実施した。採取地は急性脳症発症者が食べたきのこを採取した地点を中心とした。前年度は天候不順で思うようにきのこの採取ができなかったが、平成20年度は幸いにも必要なきのこの量は採取できた。今年度は前年度まで新潟県森林研究所に依頼していたきのこの採取は実施しなかった。 2. 青酸濃度の年比較:平成16年秋に発生した急性脳症の原因物質としてスギヒラタケが疑われており、本研究はスギヒラタケ中の青酸に注目して研究を行っている。平成17年度、平成18年度、平成20年度のきのこについて青酸濃度を測定すると、平成17年度が最も高く、平成20年度ではほとんど検出されないことが分かった。平成16年秋に採取したきのこについては入手できず検討していないので確定はできないが、平成16年秋のスギヒラタケ中青酸濃度が理由は不明であるが他の年度よりも高濃度であったことが推定できる。 3. 急性脳症発症メカニズム:体内に摂取された微量の青酸は、生理的状態ではチオ硫酸塩を基質としてロダナーゼの作用で無毒化できる。チオ硫酸塩は硫黄を含むアミノ酸から合成されるため低蛋白の食事を続けると少なくなり、微量の青酸すら代謝できずに神経毒のシアネートを産生してしまう。これが急性脳症発症のメカニズムと考えられる。平成16年秋の急性脳症の患者の多くが腎疾患患者であったことより、腎疾患患者は通常低蛋白の食事を摂取していることで、チオ硫酸塩が少ないことが考えられ、このメカニズムが成立すると考えられる。
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