【研究の目的】実際の飲酒パターンに近く、栄養素のバランスと等カロリーの食餌摂取に留意しい慢性アルコール投与の実験モデルを作成、無麻酔、自由行動可能の状態にして、飲酒パターンと心臓性突然死との関連を解明する。 【研究実施計画】7週令のWistar系雄ラットを用い、pair-feedingを行い、コントロール、アルコール持続投与、断酒1日および断酒21日動物モデルを作成した。作成した動物を用いて、下記の実験を行った。(1)心エコーを行い、各飲酒パターンラットの心機能を評価した;(2)ラットの腹腔内に心電図の送信機を埋め込んで、24時間心電図を記録し、心臓局所的な自律神経機能を評価した;(3)血中ノルアドレナリンの代謝産物であるMHPGを測定し、全身の交感神経活性化を評価した;(4)エピネフリン不整脈の誘発試験を行った。 【実施した研究の成果】(1)慢性アルコール持続投与による左室収縮能障害が断酒早期に増悪したが、断酒21日後にコントロールラットレベルに回復できた。(2)断酒早期に心臓交感神経の活性化および迷走神経活動の低下をみられ、自律神経機能の失調を認めた。断酒21日後に交感神経および迷走神経機能はコントロールラットレベルに回復できた。(3)断酒早期に全身の交感神経活性化を認めた。その活性化が断酒21日後に消失した。(4)不整脈の誘発率は早期離脱ラットが高かった。 【意義、重要性】離脱早期に自律神経機能の失調を介する心臓性不整脈発生リスクが高くなることの解明は、アルコールの不適切な摂取による不幸な突然死およびアルコール依存症の拘束時や治療期間中の原因不明な突然死の回避に対して重要と考えられる。
|