心筋症(CM)は突然死の原因ともなり、現在までに9種類のサルコメアを構成する遺伝子が原因遺伝子として同定されている。今回、原因遺伝子の一つである心筋βミオシン重鎖遺伝子(MYH7)およびトロポニンT遺伝子(TNNT2)の変異解析を、心筋症を原疾患とする心臓性突然死症例について行った。対象は肥大型心筋症(HCM)11例、拡張型心筋症(DCM)6例、不整脈原性右室心筋症(ARVC)1例であり、Controlにはすでに連結不可能匿名化して保存されている特記すべき疾患のない健常人18例を用いた。MYH7のExon3〜40およびTNNT2のExon2〜16についてプライマーを作製しPCR増幅後、ダイレクトシークエンスにより塩基配列を決定した。変異解析の結果、MYH7遺伝子でCM群では2種類のサイレント変異、1種類のミスセンス変異、3ヶ所の一塩基置換および1ヶ所一塩基挿入が検出された。Control群では特異的な変異は検出されなかった。また、Exon3 Codon63、Exon10+17およびExon38+21に一塩基多型が検出された。遺伝子頻度を算出したところControl群とCM群との間で遺伝子頻度に有意な差は認められなかった。また、Odds比を求めたところ相関性は認められなかった。TNNT2遺伝子ではCM群で1種類のサイレント変異、1種類のミスセンス変異が検出された。さらに、Exon12-32に一塩基多型が検出された。遺伝子頻度を算出したところControl群とCM群との間で遺伝子頻度に有意な差は認められなかった。今回検討を行った肥大型心筋症例のなかにはMYH7とさらにTNNT2遺伝子にも変異が検出された症例も存在したことから、発症には複数のサルコメア関連遺伝子が関与している可能性も示唆された。
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