研究概要 |
1.カラムの選択と定性精度の関係 本研究ではカラムの選択が重要である。今回,12種類の薬物を対象薬物としてCOSMOSIL HILIC(HILIC,ナカライテスク)及びXBridge ShieldRP18(RP18,Waters)の分離をCOSMOSIL5C18-MS-II(C18)を基準にして同定への有効性を調べた。その結果,HILICは三環系向うつ剤系が早く溶出され,バルビツール酸系が遅く溶出される傾向があり,同一系統の薬物はほぼ同じ保持時間となった。このことから同じ系統の薬物の分離には適さなかったが,C18とは異なった保持時間が得られることから同定には意義が認められた。この特性を活用するためにCadenza CD-C18(Imtakt),カラム長70mm或は30mmを連結させた。そこ結果,HILICの欠点である分離は改善されたがピークがブロードになる欠点が認められた。PR18カラムはペントバルビタールでPR18が同定に有効と思われたが他の薬物はC18とほぼ同じ傾向を示した。 2.NaCl-アセトニトリル抽出法のトライエージ検査への応用 濫用薬物簡易キットのトライエージは尿を対象としている。しかし中毒評価には血液からの情報が最も重要であることからNaCl-アセトニトリル抽出法を用いた前処理法を検討した。その結果,前処理法として0.5mlの検体に等量のアセトニトリルを添加して攪拌・遠心処理した後,NaClを0.2g添加して攪拌・遠心処理して二相に分離した上清を分取。抽出液200μlに純水を200μl添加した後,遠心濃縮器(チャンバー温度55℃)で25分間遠心濃縮処理をしてアセトニトリルを除去した。この時アセトニトリルは0.5%程度残存するが,5%含まれていても判定には影響が認められなかた。この応用性を尿で陽性を示した事例で検討した。その結果,尿で陽性,血液で陰性を示した事例もあったが機器分析の定量結果から矛盾は認められなかった。このことから中毒評価に最も重要な血液からの情報が得ることができる本前処理法の実用性が認められた。
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