FUT2のタンパクコード領域は集団特異的な多型に富むことが知られている。様々な人集団サンプルを対象としプロモーター領域の多様性を調べた。その結果、アフリカの2集団には高頻度の多型が存在するのに対し、ヨーロッパやアジア人には稀な多型しか存在しなかった。ルシフェラーゼを指標としたプロモーターアッセイによりアフリカ人に特異的な多型は転写活性に影響を与えることがわかった。データベースによると、アフリカ人ではさらに上流域までTajima'sD値が高く、平衡選択が働いている可能性が考えられるが、LD解析をおこなったところプロモーターとコーディング領域の多型に強い連鎖は無く、アフリカではそれぞれ別のブロックとして平衡選択を受けている可能性が示唆された。(論文投稿中) ルイス式血液型抗原の合成に関わるルイス酵素とSe酵素のゴルジ体内での局在の順列を明らかにするため、FUT2とFUT3のN末に存在する細胞質ドメインをPCR法により交換したキメラ遺伝子(FUT23、FUT32とする)を発現ベクターに組み込み、サル腎臓由来細胞COS-7に一過性に発現させ、Le^a、Le^b抗原の発現を調べたところ、FUT2とFUT3を共発現させたときよりFUT23とFUT32を共発現させたときの方がLe^a抗原に対するLe^b抗原の発現量が低いことが分かった。このことから、ゴルジ体内での二つの酵素の位置関係がルイス式血液型の決定に重要であり、局在の情報は細胞外ドメインが担っていることが示唆された。現在、蛍光タンパク遺伝子との融合コンストラクトを作製しており、今後、蛍光を指標としそれぞれの細胞内での局在を調べる予定である。
|