研究概要 |
被験者は健常者12名で,連続する3日間実験を行った。被験者は,「黄連解毒湯エキス剤2.5gを水100mlで内服」,「加味逍遙散エキス剤2.5gを水100mlで内服」,「水100mlのみを内服」のいずれかを行なった後30分間安静を保ち,その後20分間の背部に対する温水・冷水交互刺激の実験を実施した.服用する漢方薬(もしくは水のみ)を変えて,同じ実験を2日目,3日目についても実施した.実験を行なう時間帯は被験者毎に3日間とも同じとした.また,服用する漢方薬(もしくは水のみ)の順序は,順序効果を排除するため被験者毎に異なるようにした. 実験では,椅子に座った状態で4分安静にした後,冷水→温水→冷水→温水の順序でそれぞれ4分間の刺激を行なった.実験の間,被験者の心電図波形,連続血圧波形,指尖光電脈波波形を計測し,パーソナルコンピュータを用いて1msの精度で記録した. 実験の結果,3日間とも体動等のアーチファクトのないデータがとれた5名(男性4名,女性1名;平均年齢29.4±10.2歳)について解析の対象とした. 実験で得られた心電図波形からR波の間隔を算出し,この逆数から心拍数変動HR [bpm]を求めた.また,連続血圧波形から各拍における平均血圧MBP [mmllg]を求めた.さらに,指尖光電脈波波形からは,各拍内における最大値と最小値の差である脈波波高値PAを算出した.解析の結果、 1.心拍数HR,血圧MBP,脈波波高値PAのみを比較した場合では,漢方薬の違いによる差は認めなかった 2.PAは他の指標と比べ変化の度合いが大きく,温冷水刺激による血管収縮運動をよく反映していると考えられた 3.血圧一心拍数間の最大相互相関係数ρmaxは,はじめの冷水刺激時において,漢方薬を服用しなかった場合が服用した場合に比べ有意に低下した.漢方薬の服用により、冷水刺激による自律神経のみだれが抑制されていることが示唆された。しかし薬の種類の違いによる差は認められなかった.
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