研究概要 |
人体が鍼治療や漢方薬内服などで刺激を受けたとき、その生理的・心理的状態が変化し、この変化が自律神経系に影響を与えることが考えられる。ρmaxはMayer波の帯域における2変数(血圧、脈波伝搬時間、心拍数)間の相互相関係数の最大値である。これは自律神経系に支配される循環系に関する生理指標であり,鍼刺入や漢方薬内服のような何らかの刺激が自律神経系に及ぼす影響を反映する可能性がある。非観血的心拍血圧変動時系列曲線評価システムを用いて、心拍変動と指尖における脈波を持続的にモニタリングし、ADコンバータを介して、1msのサンプリングでパーソナルコンピュータに入力する。得られたデータはオフライン解析され、心拍血圧のゆらぎ成分から交感神経、副交感神経の活動バランスを評価すると同時に、その低周波成分の伝達特性から、中枢における血圧反射制御の定量的診断評価を試みた。 17人(男7名,女10名,平均年齢27才)の健康ボランティアの足背部の太衝穴にプラセボのシール針を用い、鍼刺激を二重盲検法で行った。鍼刺激の前後で脈波伝搬時間と心拍数のρmaxにより、本物のシール針が有意に自律神経系を刺激することが認められた。 また、5名(男性4名,女性1名;平均年齢29.4±10.2歳)の健康ボランティアに漢方薬と水を内服させ、背部に温冷刺激を与えたときの漢方薬の自律神経活動への影響を解析し、血圧と心拍数の間のρmaxでのみ、漢方薬の有意な効果を示すことができた。 以上の結果より、鍼治療および漢方薬の作用機序研究に於いて、相互相関係数の最大値ρmaxが有用であることが示され、今後の応用が期待される。
|