研究概要 |
本年度は,麻黄附子細辛湯(MBST),葛根湯、補中益気湯および十全大補湯以外の諸種漢方薬についてMΦの抗MAC抗菌活性を増強させるような活性があるか否かについての検討を広げ,さらにMBSTを供試してMΦ機能に及ぼす作用についての検討を進めたが,その結果以下の成績が得られた。(1)計46種の漢方薬のうち有意なMΦ抗菌活性増強作用を示したものはMBSTのみであり,その他の漢方薬では麻杏ヨク甘湯に弱い活性を認めたに過ぎず,漢方薬全体としてはリンパ球の活性化などの機作を介してMΦの抗MAC抗菌活性を増強させるような薬効は弱いものと考えられる。(2)MBSTと葛根湯(TJ-1)を供試して,種々のMΦの活性酸素(ROI)産生能に及ぼす作用についてみたところ,J774.1MΦやマウス腹腔MΦでは何れの漢方薬によりROI産生能が増強したが,その効果はMBST>TJ-1であった。他方,THP-1MΦではこのような増強作用は認められなかった。(3)MBSTとMΦの抗MAC抗菌活性を増強を有することの知られているATPのマウス腹腔MΦの活性酸化窒素(RNI)産生能に及ぼす作用についてみたところ,各薬剤の単独,併用とも有意な増強作用は認められなかった。以上の成績より,MBSTにはMΦのROI産生能増強作用が期待されることが明らかになった。今後はMBSTを作用させたMΦやリンパ球での各種サイトカインやケモカインの発現動態や,さらにアポトーシス誘導プロフィールについて,gP^<91phox>やcPLA_2遺伝子をターゲットとしたsiRNAを用いた実験系での一連の検討を進める予定である。なお,本年度の別途の検討で,MΦ抗MAC抗菌活性の増強作用を有する免疫補助剤であるピコリン酸には,MΦにアポトーシスの早期のプロセスを誘導する作用が認められているので,MBSTとピコリン酸との併用の系での検討も進める予定である。
|