研究概要 |
本年度は以下の検討を行った。(1)麻黄附子細辛湯(MBST)と葛根湯を供試して,MΦのROI産生能に及ぼす作用についての検討を進めたが,プラスチックウェル中での前培養中に供試漢方薬を作用させたMΦでは,PMAで誘起されるROI産生がMBST処理により若干増強することが確かめられた。他方,硝子バイアル中での前培養で薬剤処理下した場合は逆に抑制されており,MΦのmatrixとの接着強度によって,MBSTの活性化シグナルの伝達様式が異なる可能性が考えられた。(2)20種の漢方薬のT細胞のConA誘導mitogenesisに及ぼす作用についてみたところ,供試漢方薬の多くは弱い阻害作用を,MBSTは中等度の阻害作用を,黄連解毒湯や補中益気湯は強い阻害作用を示した。(3)siRNAによるMΦ機能制御の試みの一環として,PDLに特異的なmorphorino-antisense oligonucleotideのMAC感染MΦの細胞機能に及ぼす影響について検討したが,確かにMΦのサプレッサー活性が抑制される傾向を認めたので,現在,細胞質phospholipase A_2(cPLA_2)に特異的なsiRNAについての検討を進めつつある。以上,これまでの検討により,供試46種の漢方薬にはMAC感染抵抗性増強作用は期待できないという結果が得られたので,より有望な免疫補助剤として,天然有機化合物ピコリン酸(PA)に照準を当て検討を進めてみた。PAには,MΦの抗MAC活性に対する増強作用が認められるが,本年度の検討では,(5)PAはquinacrineなどのcPLA_2阻害剤との間に併用効果を示すこと,(6)PAはMAC感染あるいは非感染MΦに作用してAnnexinV法で検出されるような早期のアポトーシスのプロセスを誘導するが,DNA laddering法で検出されるような後期のアポトーシス反応である染色体DNAの分解にまでは至らないことが明らかになってきている。
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